Research Projects

Research Project 1
水性ミクロ相分離二相系高分子集積体の創成

異種高分子鎖が連結されたブロック共重合体は，相分離によりナノメートルスケールの格子状秩序構造を自発的に形成します。当研究室では，次世代生体適合性高分子として注目されている双性イオン高分子で構成される ”両親水性”ブロック共重合体の濃厚溶液においてミクロ相分離構造が形成され，高分子濃度に応じて構造転移する現象を世界で初めて発見しました（M. Takahashi, A. Shimizu, S. Yusa, Y. Higaki, Macromol. Chem. Phys., 222 (4), 2000377 (2021)）。分子構造の異なる複数の両親水性ブロック共重合体における特異な相分離現象を見出しており，普遍的原理の解明を目指して研究しています。この発見は，分子内包場が分画された新たな薬物キャリアや環境応答性分子システムへの応用が見込まれます。

Research Project 2
生体適合性高分子／生体高分子複合薄膜の創成

生体軟骨は，コラーゲンがプロテオグリカンで被覆された界面を形成しており，潤滑液が介在することで高度な潤滑性を示します。すなわち，生体組織では多様な流体が調和した分子システムを界面で構築することで，卓越した界面特性を実現しています。当研究室では，タンパク質や抗菌ペプチドを生体適合性高分子薄膜と複合化することで，生体分子が優れた特性を損なうことなく固定化された複合薄膜を創成しました（Y. Higaki, R. Furusawa, T. Otsu, N. L. Yamada, Langmuir, 38(30), 9278-9284 (2022)）。この新たな複合薄膜の液体界面における水和状態や分子鎖形態を解明するとともに，潤滑性，抗菌性を定量的に評価することで，高分子複合界面の実態を分子レベルで研究しています。

Research Project 3
高分子膜の界面設計による防汚性・潤滑性改質プロセスの開発

公衆衛生のため，あらゆる物品には防汚性や抗菌性が求められます。また，膜分離活性汚泥法などの汚水処理プロセスで利用される水処理分離膜では，汚泥に含まれる微生物の吸着や微生物の産生するバイオフィルムによる細孔閉塞の抑制が求められます。親水性高分子が材料表面に固定化されると，水中で高度に水和した分子鎖が表面を被覆するため油性物質，タンパク質や微生物の付着が抑制されることが知られており，様々な技術が開発されています。当研究室では，“高分子化学”，“コロイド・界面化学”に基づく新たな親水性高分子鎖被覆プロセスを研究しています。民間企業の研究者と連携した産学共同研究による社会実装を目指して活動しています。